筋肉は何歳からでもつきます。本当に⁉と思った方は、この内容をぜひ読んでから判断していただきたいです。患者さまから「もう年だから、筋肉はつかないよね」と言われることがあります。
そんなことはありません。筋肉は何歳からでもつきます!
しかし、若いころと同じようにとはいきません。でも、諦めなくていいんです。これから、その理由をお伝えしていきますね。
筋肉が減少し始める年齢と原因
筋肉量は通常、30歳前後から減少を始め、40代以降は年1%ずつ減ると言われています。この減少はサルコペニア(筋肉減少症)と呼ばれ、加齢とともに筋肉合成能力も落ちていきます。
筋肉合成能力が落ちる理由
筋肉の合成能力が加齢や生活習慣によって低下する主な原因は以下の通りです。
- ホルモンの減少
- 加齢に伴い、成長ホルモンやテストステロンの分泌が減少します。これらのホルモンは筋肉の成長を促すため、ホルモンの分泌が減少すると筋肉の合成能力が低下します。
- インスリン様成長因子1(IGF-1)も加齢とともに減少し、筋肉の修復と成長が遅くなります。
- タンパク質代謝の低下
- 筋肉合成に必要なタンパク質の吸収能力が落ち、摂取したタンパク質が効率的に利用されなくなります。
- 筋肉内のタンパク質分解が進む一方で、合成が追いつかなくなります。
- 慢性炎症
- 高齢者では炎症性サイトカイン(IL-6やTNF-α)の分泌が増加し、筋肉合成に悪影響を及ぼします。
- 慢性炎症は筋肉分解を促進し、筋肉量減少の原因となります。
- 血流低下
- 加齢や運動不足により血流が悪化すると、筋肉に必要な栄養素や酸素の供給が減少します。これが筋合成の効率を下げる原因となります。
筋肉は何歳までつくのか?
筋肉は80代、90代になっても増やすことができます。ただし、加齢とともに筋合成速度は遅くなるため、20代と比べて時間がかかります。
20代と80代の筋肉量の違いを見てみると、80代の筋肉量は20代の約50〜70%程度とされています。トレーニングを継続している高齢者ではこの差は小さくなることも分かっています。
高齢者が筋肉をつけるためには、筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)とタンパク質摂取を含め色々な栄養と組み合わせることが鍵です。加えて、ビタミンDの補給が筋肉強化に有効であると報告されています。
筋肉の構造と役割
筋肉は身体を動かし、姿勢を維持し、代謝を促進する重要な組織です。人間の筋肉は大きく分けて3つに分けられます。
- 骨格筋:運動や姿勢維持に関与する筋肉。意識的に動かすことができます。
- 平滑筋:内臓や血管の壁にある筋肉。自律神経により調整され、意識的には動かすことができません。
- 心筋:心臓を動かす筋肉。心臓の拍動を維持します。
骨格筋は筋繊維(筋細胞)が束になって作られていて、これを包む結合組織があります。筋繊維は、アクチンとミオシンというタンパク質からなり、フィラメントが滑ることで収縮し、力を発揮します。
筋肉をつけるために必要な栄養
筋肉を増強するには、適切なトレーニングと栄養摂取がととても重要です。
筋肉合成能力を上げるために必要な栄養
- 必須アミノ酸(EAA)と分岐鎖アミノ酸(BCAA)
- 筋肉合成の直接的な材料となります。特にロイシンはmTOR(筋肉合成を調節するシグナル経路)を活性化させ、筋合成を促進します。
- 食材例:鶏肉、魚、大豆製品、乳製品
- オメガ3脂肪酸
- 抗炎症作用を持ち、慢性炎症を抑えることで筋肉合成をサポートします。
- 食材例:サーモン、アマニ油、チアシード
- ビタミンD
- 筋肉機能を向上させ、炎症を抑制します。また、カルシウムの吸収を助け、筋肉の収縮を助けてくれます。
- 食材例:サバ、卵黄、きのこ
- 亜鉛とマグネシウム
- テストステロンの生成を助け、筋合成を促進します。
- 食材例:牡蠣、ナッツ、緑色野菜
- クレアチン
- 筋細胞内でエネルギー源となり、トレーニング時のパフォーマンスを向上させます。また、筋合成を直接的に促進する作用もあります。
核酸と筋肉合成の関係
核酸(DNAやRNA)は筋肉合成において重要な役割を果たします。筋細胞が新しいタンパク質を合成する際、核酸が遺伝情報を提供し、アミノ酸を正確に組み立てるための「設計図」として機能します。
- 核酸の重要性
- 筋肉の修復や成長には細胞内でRNAが活性化され、新しいタンパク質が合成される必要があります。この過程はmTORシグナル経路と連動しており、核酸の供給が不足すると合成効率が低下します。
- 加齢と核酸合成能力の低下
- 加齢に伴い、細胞内での核酸合成能力も低下します。これが筋肉の修復や成長を遅らせる一因です。
- 核酸を補う方法
- 核酸を含む食材を摂取することで筋肉合成を間接的にサポートできます。
- 食材例:魚介類(特にイワシやサケ)、レバー、海藻類
筋肉合成能力を高める方法のまとめ
- レジスタンストレーニング
筋肉の刺激は合成能力を高める最大の要因です。適切な負荷をかけた運動を継続することで、筋肉の分解を抑制し、合成を促進します。 - プロテインやアミノ酸補給
運動後30分以内にタンパク質を摂取することで、筋合成が効率的に進みます。 - 抗酸化食品の摂取
慢性炎症を抑えるために、ビタミンCやE、ポリフェノールを含む食品(フルーツ、ナッツ)を摂取しましょう。 - 十分な睡眠
成長ホルモンは睡眠中に分泌されるため、睡眠時間を確保することも重要です。
まとめ
筋肉は身体機能を支える重要な組織で、加齢による減少を防ぐためには、継続的な運動と栄養摂取が必要です。何歳になっても筋肉は鍛えることができるため、諦める必要はありません。筋肉をつけたり維持する為には、定期的なトレーニングを習慣化しましょう。