水風呂の効果とその歴史
水風呂は、温冷交代浴や寒冷療法の一環として、古くから世界中で利用されてきた方法です。寒冷療法は古代ギリシャやローマの時代から行われており、特にローマ時代には温水と冷水の浴場を交互に使用することで健康を増進するとされていました。また、日本においても温泉療法や水風呂は伝統的に親しまれており、現在は、サウナとセットでの利用が広く利用されています。
現代では、スポーツ選手のリカバリー手段としても注目されており、水風呂が持つ体へのポジティブな影響の研究が進んでいます。
水風呂のメリット
- 血流の改善
水風呂に浸かると、体温が急激に低下し、血管が収縮します。その後、温かい空気やお風呂で体温が上がると血管が再び拡張し、血流が活発になります。これにより血液循環が改善され、酸素や栄養素が体内をスムーズに巡り、老廃物の排出が促される効果があります。 - 筋肉の回復を促進
水風呂に入ると、低温によって筋肉の炎症が抑制され、筋肉疲労が軽減されるとされています。特に、スポーツ選手が激しい運動の後に水風呂に入ることで、筋肉の痛みや疲労を和らげることが期待されるため、回復が早まることが期待されています。 - 免疫力の向上
低温の刺激は免疫系にも良い影響を与えることが研究でわかってきています。低温刺激が交感神経を活性化し、血中の白血球の数が増加するとされており、これが免疫力の向上につながる可能性があると考えられています。 - リラックス効果
水風呂は一見リラックスとは程遠いように思えますが、冷水に浸かると体はショック状態から脱するためにエンドルフィンやアドレナリンが分泌され、気分が高揚するとともにストレスが軽減されます。 - 精神の鍛錬
冷水に入ることは、精神的な強さや忍耐力を養う手段ともされています。定期的に水風呂に入ることで、自己制御力やストレス耐性が強化されると感じる人も多くいます。
デメリット
水風呂は健康に良い効果をもたらしますが、以下のような注意点もあります。
- 体温の急激な低下によるショック
冷水に急に入ると、体温が急激に下がることでショック症状が発生する可能性があります。特に心臓に負担がかかるため、心臓疾患がある人や高齢者は医師に相談してから行うことをおすすめいたします。。 - 血圧の変動
急激な温度変化により、血圧が大きく変動する可能性があります。低血圧や高血圧の方は、慎重に利用することが重要です。 - 低体温症のリスク
長時間水風呂に入ると体温が低下しすぎ、低体温症になるリスクが高まります。短時間(数分程度)の利用にとどめることが推奨されています。
水風呂と冷水浴の違い
水風呂と冷水浴は似ていますが、目的や方法、利用シーンにいくつかの違いがあります。
- 温度と設備の違い
- 水風呂:一般的に15〜20℃程度の水温で、サウナや温泉施設の浴槽に水をためた形で提供されています。設備としては浴槽に水が入っており、入りやすい深さになっていることが多いです。
- 冷水浴:冷水浴はもっと低温(10℃以下)で行われることが多く、プールや川、氷の入った冷水を使う場合もあります。また、冷水シャワーでの冷水浴もあり、自宅で簡単にできるのが特徴です。
- 利用目的の違い
- 水風呂:水風呂はサウナ後に入ることが多く、体温を急速に下げることで血流を促し、リラックスや爽快感を得ることが目的です。温冷交代浴の一環として、血液循環の改善や免疫力向上が期待されます。
- 冷水浴:冷水浴はリハビリテーションや筋肉の回復、精神的な鍛錬など、目的が多様です。スポーツ選手が筋肉痛や疲労回復のために行ったり、メンタルの強化として寒冷療法を取り入れたりするケースもあります。冷水浴は冷水の刺激によって体を引き締め、代謝や自律神経を活性化させることを意図しています。
- メリットの違い
- 水風呂:水風呂は主にサウナ後の体温調整やリフレッシュのための利用が多いです。温冷交代による血流改善や疲労回復の効果が期待されます。また、水風呂は比較的低い水温で体に負担が少ないため、冷水浴よりも一般的に手軽です。
- 冷水浴:冷水浴はさらに強い冷却作用があり、炎症抑制や筋肉回復が主なメリットです。また、冷水による強い刺激でアドレナリンやノルアドレナリンが分泌され、気分が高揚し、精神的なリフレッシュも期待できます。
- デメリットの違い
- 水風呂:温度が冷水浴ほど低くないため、深いリカバリー効果は冷水浴ほどではない場合があります。また、水温が20℃程度の場合、一定のリカバリー効果はあるものの、寒冷療法としては効果が薄いとされます。
- 冷水浴:冷水浴は温度が低いため、体への負担が大きく、低血圧や低体温症のリスクがあります。十分に安全に配慮しながら短時間で行う必要があり、入浴時間や水温管理に注意が必要です。
まとめ
水風呂と冷水浴も、やり方によってさまざまな効果が期待できます。身体の代謝を良くすることで、筋肉の回復・免疫系にも良い影響がありますのでやってみてください。しかし、高血圧や心疾患などある方は、まず担当のお医者さんにご相談の上、行ってください。また、代謝がよくなれば腰痛や肩こり、頭痛などにもいい効果が期待できるかもしれません。○○をやったから、身体が良くなるわけでもありません。大事な事は、まずはやってみることです。試してみて、合わなければやめればいいので、無理のない範囲で行ってみてはいかがでしょうか。つくし鍼灸整骨院では、腰痛や坐骨神経痛などのお悩み以外の事でも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
参考文献
- 免疫力と冷水療法に関する研究
- Buijze, G. A., et al. “The effect of cold exposure training on health and the immune system.” PLOS ONE, 2016.
- 研究では、冷水への曝露が免疫機能に与える影響について検証されており、寒冷刺激が白血球の活性化を促すことが示されています。免疫力の向上や健康増進効果について述べられています。
- 筋肉の回復と冷水浴の効果
- Bleakley, C. M., & Davison, G. W. “What is the biochemical and physiological rationale for using cold-water immersion in sports recovery?” British Journal of Sports Medicine, 2010.
- この論文は、冷水浴が筋肉の炎症を抑制し、運動後のリカバリーに役立つメカニズムについて解説しています。冷水による血流制限が筋肉の損傷を軽減し、疲労回復を促す効果が確認されています。
- 温冷交代療法と血流促進効果
- Wilcock, I. M., et al. “The use of recovery strategies in professional soccer.” Sports Medicine, 2006.
- 温冷交代療法がアスリートにどのような効果をもたらすかについての研究です。血流の改善や筋肉の疲労軽減に関する実験結果が含まれており、水風呂と冷水浴の利点についても触れられています。
- 冷水浴による自律神経と精神的効果
- Geurts, C. L., et al. “Effects of regular cold exposure on stress tolerance and autonomic function in humans.” Psychoneuroendocrinology, 2015.
- 冷水浴が自律神経やストレス耐性に与える影響について調べた研究です。冷水が交感神経を活性化させ、精神的なリフレッシュやストレス解消に役立つことが示唆されています。
- 水風呂と温泉療法の歴史と効用
- Mackenzie, B. “Therapeutic use of cold water: History and contemporary benefits.” International Journal of Aquatic Research and Education, 2013.
- この論文は、水風呂や冷水療法の歴史とその健康効果についての概説を行っており、古代からの治療法としての利用の背景が説明されています。
コラム執筆・監修者
合同会社 Rerise
つくし鍼灸整骨院
代表取締役 東 智博
・厚生労働大臣認定資格
柔道整復師 鍼灸師 専科教員
・経歴
墨田区内整骨院勤務14年
2019年7月 台東区北上野につくし鍼灸整骨院を開院